大判例

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高松高等裁判所 昭和39年(う)310号 判決

判決理由〔抄録〕

論旨は、原判決は原判示第二の事実につき、被告人が大型貨物自動車を後退させる場合の注意義務として「後方左右の安全を充分確認しながら最徐行し、事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務がある」と判示しているが、被害者西川ゆかり(当時二歳)は道路左側の店でキャラメルを買って帰宅すべく道路を斜めに横断し自動車の後方をよちよち歩いていたものと推察されるところ、斯ることは運転者として予見することができない上、被告人は自動車を後進させるに当って、運転手席右側の窓から頭を出し右側後方を見ながら約八米後進したのであって、この場合、車の左側および後方は視界の外にあるから、その方面の安全を確認する術がない。したがって、被告人には原判示のような注意義務はなく、原判決には注意義務に関する刑法二一一条の解釈適用を誤った違法がある、というのである。

よって按ずるに、原判示の如き本件事故現場附近の状況の下において、自動車運転者である被告人が本件自動車を後進させるに当っては(弁護人の控訴趣意書中に、被告人が後進を始めるに当って一応後写鏡により自動車の左側後方の安全を確かめた旨主張しているようであるが、被告人の検察官に対する供述調書中その旨の供述は措信できず、原判決挙示の関係各証拠、特に被告人の司法警察員に対する昭和三九年二月二五日付供述調書によれば、被告人は、今来たばかりの道だから人通りはないものと軽信し、直ちに右側後方のみを見て後進を始めたものであることが認められる)何時何処から人が出て来るやも知れないことは十分に予見し得るところであり、自動車の後方左右の安全を十分に確認しながら後進し、事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があることは当然であって、自動車に助手が同乗していないため自動車の後進に困難があるとしても、いわゆる盲運転は許されず、本件の場合対向して来た自動三輪車の乗務員又は附近の住人に依頼して自動車の後進を誘導させることは容易になし得るところであり、右のほか自ら降車して後方一帯を見廻す等機宜の方法を講じ、自動車の右側はもちろんその左側および後方の安全を確認しながら後進すべき注意義務があるのであって、これと同旨に出でた原判決の判断は正当であり、所論のような違法はない。

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